たった一つの願い˚*・.。  【創作寓話】byよつくま




【たった一つの願い】


モノに心は宿らないのか…
宿るわけがない、モノはモノだ…。
用済みのモノは廃棄するしかない。ゴミとして…

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果たしてそうなのでしょうか?

これはこんな時代に起こるかもしれない不思議なお話…。



雷鳴と静寂


ドーンと大きな音を立てて一本の雷が落ちた。

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あとはまた静寂に包まれるのみ。

ここは廃棄場…
そう、誰にも気にされることなくあとは廃棄処分されるだけの。
モノたちが集められる場所…。



トレエとの出会い


一時期大ブームになったコミュニケーション型アンドロイド。
AIが搭載されて飼い主を認識し、行動パターンなどから細かく行動できる。

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お世話も不要、散歩も不要、そして子供の相手から介護まで幅広く対応できることから、大人気となった。
都市型の暮らしにも対応できるのでかなりの数が販売された犬型モデル トレエ型。

しかし何年か過ぎると、人型のアンドロイドが普及し始め、ペット型のアンドロイドは廃れていった。

「特に何もできないし」
「子供も大きくなったし見向きもしないよ」
「家事をしてくれるわけでもないし」

そして多くの犬型モデルトレエ型は廃棄されていった。
その中に宿る魂など知る由もなく…。

それはそうなのだ…。彼らはモノであって命ではないのだから…。



「トレエ!こっちだおいで!」
トレエはセンサーを起動した。

ピッ!ご主人タピオの声を確認。行動開始。

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タピオは一人っ子で共働きの家族と暮らしていた。
家に一人でいる時が多いので、遊び相手として両親がアンドロイド犬トレエを与えたのだ。

トレエはいつでもタピオのそばにいた。
それはそうプログラムが動いていたから、タピオの中に寂しさを感知していたから。

プログラムに沿って行動していたからなのだろう。
進んだAIプログラムは対象の感情を読み取り、最善の行動をとる。
そう作られていたのだ。


「今日はボール遊びをするぞ」
「トレエ!とってこい!」

「ワン!」

きちんとボイス機能も搭載されていた。

タピオはボールを持ってくると頭をなでてくれる。
ピッ!タピオに喜びを感知…。


何度もボールを持ってきては頭をなでられた。
なでる行為に何の意味があるか…ピッ!理解不能??

しかしそれでよかった。
それを考えるプログラムはされていないのだから。

そんな普通の日々が続いていった。
何の問題もない日々が。



訪問者と別れ


とある大雨の日だった。
時折雷鳴も轟いている…。

両親はいつものように不在。

「ドンドンドン!」

ドアを叩く音が響いていた。

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スイッチオフ状態のトレエはタピオの声を感知した。
いつもと違う緊張した声…
ピッ!恐怖を感知。スイッチオン。行動開始…。


玄関には男に腕を引っ張られたタピオの姿。

ピッ!登録リスト参照…。
ステータス「アンノウン」警戒セヨ…。

プログラム警戒。
警告音発信…。???

ピッ!システムエラー発生…。


トレエはその男に突進をしていた。
よく理由はわからなかったが…そうしたほうがいい気がした。

プログラム上は静止して吠えるとそういっていたのにもかかわらず。

「痛っつ!なんだこのロボットは!」
ガシャーンと音がした。

トレエはそのまま壁に投げつけられて動かなくなった。

タピオマモラナケレ…

「トレエ!トレエ!」
タピヲ…ヨンデイ……トレエはシャットダウンした。


「なんだ?今の音は?」
近隣の人たちが出てきた…

「ちっ!」
男はその場を離れて逃走した。


その夜…

最近は物騒になっていて小さな子供を狙った誘拐などが増えてきていた。
比較的裕福で留守がちなタピオの家は狙われていたようだった。


「きちんとした施設に預けたほうがいいな」とタピオの父
「警備システムのある人型アンドロイドにしましょうよ。洗い物してくれるのもあるのよ」と母の声

タピオは二人に訴えた。
「トレエが救ってくれたんだ!悪党にタックルしたんだよ!」
動かないトレエを抱えて泣くタピオ…

涙がポツリとトレエに落ちている

「ナンダロウコノカンジハ…アタタカ……」それがメモリーの最後であった。



廃棄場と意思


雷の衝撃があたりに響き渡っていた。
無機質なグレーの空間。
一瞬の光でガラクタの山が浮き上がる。

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その後静寂が訪れた…何も変わらない。変わりようがない。
ここは役目を終えたモノしかいないはずだった。


ピッ!再起動を確認…
バッテリー20%
損傷個所多数…
行動…可能…ピッ!

トレエは雷によって充電をされて目を覚ました。
そこがどこかはデータになかった。

タピオサガス
タピオマモル
アタマナデラレル…

ふらふらと動き出すトレエ。
廃棄場の道は坂になっており、四肢のパーツ破損状態のトレエにとっては余りに過酷であった。

その方向がどこに向かっているかも全く分からない。

プログラム上ではアラートが鳴り響き…
メンテナンスプログラムが発動中。
ピッ!シャットダウンを開始…

タピオ…
アイタい…

シャットダウンプログラムは破棄された。
そこには確実に「意思」が存在していた。

この坂の向こうに青白い光が見えた。
なぜかそこに向かわなければならないと判断した。

それはプログラムでもなんでもなくトレエの「意思」で…青白い光へと向かって。



青い光とたった一つの願い


雷鳴は止むことなくあたりを時折照らし続ける。

青白い光のそばにつく頃
トレエの充電は3%くらいだろうか…

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大きな角を二つもったふさふさの毛の獣と赤い服の老人が見えた。

「ほっほっほ…珍しいお客さんだ…」

タピオアイタイ
タピオマモリタイ…

「それがお願いかな?」といわれた気がした…
フッと視界が暗くなりトレエは動かなくなった。

タピを…。

青い光だけがあたりを包んでいた。



裕福と孤独と再会


今日はクリスマスの日…だというのに両親は仕事…

裕福さの中にある孤独。
それでも暖かい家があって、恵まれているのだろう。
そう…きっとそのはずだ。

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タピオは人型アンドロイドと一緒に暮らしていた。
あれから同様の事件は起こっていない。

不審者を警備する新型アンドロイドには事件にかかわるプログラムがされており、
犯罪者リストも搭載されていることから、そう簡単に手を出せないようになっていた。
警察への連絡機能や扉の開閉も制限できる。

「タピオ様…シュクダイノオジカンデス」

「どうして君はそんなに機械的にしゃべるんだよ」とタピオ
「ソノヨウニプログラムサレテイマス」
「つまんないの…」


現在発売している人型アンドロイドには、AI抑制システムが搭載されている。

これは不用意な行動…
つまり欠陥行動が起こりうる重大なプログラムミスを未然に防ぐためのプログラムである。

しぶしぶと机に向かうタピオ…

ペンを持つも上の空で窓を眺めていたタピオ。


その時だった。


「ワゥワゥ!」

窓の外から声が聞こえた…

「君、何か言ったかい?」とタピオ
「ピッ!ナニカゴヨウデスカ?」
「何でもないよ!もう!」


「ワゥワゥ!」

やっぱり聞こえる!

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雪景色の庭の一角…
樹の陰に白い影がある。
その方向から声が聞こえるのだ。


窓を開けると白い犬が一匹尾を振っていた。

なぜか涙があふれてくる…僕はあの犬を知っている!
玄関へ走り出すタピオ。


「トレエ!トレエだろう!!」
「ばうばぅ!」


出てきたタピオの顔をなめる白い犬。


アタマをなでられて嬉しそうな白い犬…。


窓の開閉も玄関の開閉も…アンドロイドによって管理されている。

普通なら外出できないようになっている窓や扉がその時は開いたこと。
警備モードがいったん解除されていること…。

タピオにはそんなことは知る由もなかった。


「ピピッ…Merry Christmas!Toree!」




【たった一つの願い】おしまい




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