寓話 : 四つ葉のくまさんの癒しのお花、時々お料理日記

四つ葉のくまさんの癒しのお花、時々お料理日記

フェイクグリーン アーティフィシャルフラワーなら四つ葉のくまさん! ハンドメイドサイト minne(ミンネ)にて多くのインテリア雑貨を出品中です。 アレンジ リース スワッグ 壁飾り 手作りの花瓶など 新作を紹介しています。 気まぐれに今さら聞けないお料理ガイド 作り置き惣菜 簡単レシピなど。 自然や雑学 言葉や健康に関するお役立ち情報もお届けしています。 お気軽にご覧くださいませ˚*・.。 ꕤ

タグ:寓話



「ブルークリスマスの奇跡」 【創作寓話】 よつくま




【「ブルークリスマスの奇跡」】



ある古びた村の外れに一本の大きな「もみの樹」がありました。
この村に残っている子供はもう彼一人…



mominoki


image freepicture



かつては栄えたこの村も、
「鉱山」の閉鎖とともに衰退していきました。

生きる希望を無くすもの。
街へと移住していくもの。


この物語はそんな村に住むとある少年が起こした、
小さな「希望」の物語です。


kibou

image freepicture



一枚の写真


寂れた村の片隅。

彼の家はもちろん裕福でなく、
いつも同じ「ぼろの服」を着て教育も受けられず。


たった一人「もみ樹」の下で遊んでいました。


BlogPaint

image freepicture



鉱山の事故で父母は他界…祖母が一人の彼の家。


とある日、彼は家で古びた写真を見つけました。

そこには村はずれの「もみの樹」に、
きらびやかな飾りが輝いたクリスマスの夜の写真でした。


mominoki1

image freepicture




「ばあちゃん、これ村はずれのもみの樹?」


祖母は答えました。

「ああ…懐かしいね……この村も昔は栄えていたからねぇ」

「昔はねあのもみの樹の周りでクリスマスのお祝いをしたもんさ…きれいだったねぇ」

遠い目をする祖母。


その時でした、

少年は何かを決意したように家を飛び出していきました。


kowaretaie

image freepicture



「あ、これ…どうしたんだい!」


祖母が声を上げた時には、
もう少年は見えなくなっていました。



「小さな少年」の「小さな決意」


その日から彼は一人で「もみの樹」に飾りをつけ始めました。


豪華な飾りなどあるわけもなく…


「木の枝」
「木の実」


kowaretaomotya

image freepicture



少し壊れてしまった「自分のおもちゃ」など…一生懸命に飾りました。



しかし「もみの樹」は大きく上の方までは手が届きません。

「どうしよう…」


miageru

image freepicture



途方に暮れていると、

空から「ぴちち」と声がしました。
上を見ると青い小鳥がこちらをみていました。


彼は、

「小鳥さん手伝っておくれよ…もみの樹を綺麗に飾りたいんだ」

と話しかけました。


aoitori

image freepicture



やや間があり、

小鳥は首をかしげて飛び去ってしまいました…



青い小鳥…希望


次の日もその次の日も、

雪が降りしきる中、少年は粗末な飾りを造っては樹に飾っていきました。


「もみの樹」がよみがえったら村も元気になると思ったのです。
「クリスマスのお祝い」をできると思ったのです。


それは純粋な気持ちでした。


mominoki

image freepicture



「上にも飾りたいんだけどなぁ」

ふぅとため息を付いて空を見上げる少年。



その時でした。

「ぴちち」と声がすると例の青い小鳥が飛んでいます。

口に草花で造った飾りを持っています!


aoitori1

image freepicture



「手伝ってくれるの!」


「ぴちち!」


小鳥たちは行ったり来たりしながら飾りをつけていきます。


BlogPaint


image freepicture




青い小鳥たちのおかげで樹の上の方まで、飾りつけははかどっていきました。


「もしかしたら、もしかしたら、元気になるかもしれない」


そんな事を考えながら毎日夕暮れまで、

ただ一生懸命に飾り付けを続けていきました。



冷めた大人たち


そんなある日、村のおじさんが通りかかりました。

手には斧を持っています。


kikori


image freepicture




「ぼうずなにやってんだ?」


ぶっきらぼうにおじさんは言いました。



「もみの樹をよみがえらせるんだよ…昔はクリスマスにお祝したんでしょ?」

と少年。


「けっ!」


おじさんは言い放ち。


「この樹はもう駄目だ…切り倒して売っちまうんだ」


「どけっぼうず!」


なんと少しでも収入を得るために、
「もみの樹」を切り倒すつもりなのです。


yamete


image freepicture



おじさんは少年の手を引っ張って樹から引き剥がそうとします。


「やめてよ!僕が復活させるから…」
「きっと復活するんだよ」


泣きながら訴える少年。


「ちっ!」


舌打ちしておじさんは行ってしまいました…




少年の熱意に打たれて


12月23日になり「もみの樹」は飾り付けられていました。
もちろん粗末なものです。


「破れた靴下」
「車輪のない車のおもちゃ」に「松ぼっくり」


matubokkuri

image freepicture



そして小鳥達の造った「草花のリース」
でも彼は思っていました…


これで「もみの樹」はよみがえるんだと。

そう信じて疑わなかったのです。


kotori


image freepicture



青い小鳥の見る目線の先に、

物陰に隠れるきこりのおじさんがおりました。


突然ごそっと音がして現れた黒い影に、
少年は驚き尻もちをつきました。


kikori1

image freepicture



のそっと現れたのはこの前のおじさんでした。


「その、こないだは悪かったな…」

「まさかこんなに飾り付けするまであきらめないとは思わなかったよ」


ばつが悪そうに言いました。


「ぼうず!ツリーなら電球つけなきゃな!」


とウインクしてくれました。


「うん、ありがとうおじさん!」


junsui

image freepicture



純粋な彼の気持ちが通じ、
村の数人が手伝って電球をつけてくれました。


久しぶりのお祝いに村の人たちの気持ちも、
あの頃のように…よみがえっていったのでした。



「ブルークリスマスの奇跡」



今日はクリスマスイブの夜12時です。

数人の村人が「もみの樹」の前に集まっています。


「さあ電気をつけるぞ」


とおじさん。


「3,2,1」カチッ! 反応はありません。



suitti



image freepicture



「ん?」



カチッ!カチッ!


何度やっても電気はつきません…


「畜生おんぼろめ!いかれやがったか」


おじさんは機械を蹴っ飛ばしました。


inori

image freepicture



少年は呆然としました。


頑張ったのに…
小鳥も手伝ってくれたのに…
おじさんも村の人たちも手伝ってくれたのに…


自然に空に手を合わせていました。


空には月が出ていました…その月に向かって手を合わせました。


BlogPaint

image freepicture



その時でした。


どこからともなく

「シャンシャンシャン!」
「シャンシャンシャン!」


と聴こえる鈴の音…



彼はふと空を見上げました。

「ほっほっほ~」

とトナカイのそりのシルエット!


「Mary Christmas!!」


あたりは蒼い光で包まれたのです。


aoihikari

image freepicture




みんな目を開けていられません。

まばゆく蒼いそんな輝きがあたりを包んだのです。


少年はゆっくりと目を開きました。



一瞬の静寂が訪れ…蒼く…どこまでも蒼く…
「もみの樹」の電球が一斉に蒼く光り、


小鳥たちも、

「ぴちち」「ぴちち」

と大はしゃぎです!



村人が見守る中「もみの樹」が復活したのです!


BlogPaint

image freepicture



「おぉあの頃のようじゃ!」

おばあちゃんも村人も目を輝かせています。



「ぼうずに教えられちまったな…」


「あきらめてたのは大人たちだったんだな…ありがとうよ」


kiseki

image freepicture



彼の純粋さが村に奇跡を起こしたのです…聖なる夜に奇跡が起こったのです。


諦めないこと…
純粋な事…

そして行動するものに幸運が訪れたのでした。



この出来事は近隣の村へ伝わっていきました。


毎年蒼く光る「もみの樹」を見に人々が集まるようになりました。
人々も徐々に増えていったようです。


hitominiao

image freepicture



いま少年の瞳に映っているのは蒼い光だけです。

村は徐々に栄えていきました。
だけど…それはまだちょっとだけ先のお話です。


おしまい(ぴちち)



aoitori2

image freepicture







【あとがき】


この物語で主人公の少年は実は何ももらっていません。
おもちゃも服も…物質的なものは何ももらっていないのです。
でもきっと彼は偉大な事をしたのです。
彼が起こした奇跡は、この後世界に拡がっていくのですから…
「ブルークリスマスの奇跡」として。



☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;




合わせて読みたい記事です





ご登録頂ければ嬉しいです






※ご登録頂くと記事が更新された際にアプリで通知が届きます。
見逃したくないブログやよく閲覧するブログなどに便利な機能ですꕤ


X(ツイッター)のんびり更新中です





  



私の忘れ物・*:.。 【創作寓話】by よつくま



忘れ物はありませんか?
もしくは忘れてきたものはありませんか?

日々に追われる生活の中でそれは置き去りにされているのかもしれません…

BlogPaint


これはちょっと生活に疲れた時に見て欲しい家族の絆のお話。



忘れられた留守番電話


とにかく日々が忙しかった…
家にいる時間は殆どない。


BlogPaint


今日もパソコンに黙々と手をやる…
無機質なカタカタというキーボードの音が響いている。

本当に響かせたいのは何?

彼女の名前はフィフラといった。
もうそれなりの年齢になっていた。
食事もおろそかに仕事に打ち込み…いや打ち込むことで何かを忘れたいのか。

もう街もクリスマス一色な季節。
自宅のピアノのそばにある留守番電話に一本の留守電が入っていた。

今日も家に帰らない彼女には知る由もない…。



フィフラがその事を知ったのは留守電が入ってから3日ほど経っていた。

父、アレクシが亡くなった。

「そっか…」

と一人つぶやいた。
信じられないほど気持ちが動かなかった。


BlogPaint


実家にはもう何年も帰っていない。

父アレクシはぶっきらぼうな人だった。
そして極めて古風で、PCやモバイルなど到底無理な堅物…。
そんな記憶しか思い出さなかった。

私が街に出ると言った時も…

「そうか」

とだけだった気がする。


留守電を入れてきたのは母のミラ。

「一度くらいお父さんに挨拶なさい」と入っていた。

母はピアノ講師をしており、その影響からか私もピアノを始めた。
よくあることだ。
そう…とっても普通の事。



小さな想い出


結構頑張ってピアノを練習した。
村の小さなコンクールで優勝をしたりした…気がする。

BlogPaint


もちろん街に出ていくつかの大会に出たりもした。

予選落ち
予選落ち
6位
7位
4位
予選落ち…

まぁそんなもんでしょ。


村の大会で優勝したからって街では…ましてそれで食べていくなんて。
到底才能の限界ってものがあるの。

家のピアノも埃をかぶっていた。
早く処分をしなくちゃって思いながら…今の所まだ出来ていない。



BlogPaint


あれはいつだったっけ?
そんなに遠くない過去。

私は夜にアルバイトがてら、ピアノを弾かせてもらっていた。
小さなお店で店員をやろうと応募して…
どういうわけかピアノを弾く流れになった。

その時声をかけられたことがあった。

「応援するよ!」
「頑張っているんだって?」

見知らぬ顔だったのでとりあえず笑顔でごまかしたっけ。


最近ではその店も辞めて…
ピアノに触れることもなくなった。

母ミラからの留守電の最後に
「とりあえずクリスマスには来るように」
と入っていた。


おそらく無理。

回答はしていない。
きっと仕事をしているだろう。
いつものように何かを忘れるように…



イブの邂逅


イブの夜。
仕事を終えて今日も22時をすぎる頃…

ふと聴こえてきたピアノの音に小さなお店に入った。

私の他に2、3組のお客しかいなくて、お世辞にも綺麗なお店ではなかった。
でも何故かその店に入りたくなった。

少し食事をして帰ろうと思ったのだ。


BlogPaint


22時30分頃。

しばらくお酒を飲んでいると、私の斜め奥の角の席に老人がいることに気がついた。
それまで気が付かなかった…
ただでさえ暗い店にみすぼらしいグレーの服が溶け込んで…
髭を蓄えた老人のようだった。

ふと目をそらした瞬間!

「ちょっといいかね?」

私の斜め前にその老人が座っていた…


!!


ぎょっとした…


「な、いったいなんですか?」


髭のある口に手を当て、静かにと言っているようなリアクションをした。


その瞬間だった!


頭にいろいろなことが流れ込んでくる…



ベッドに寝かされている赤ちゃんだ…

「この子の名前はフィフラ」
「ナナカマド」って意味だ。

魔除けの意味もあるけど、ナナカマドは何回燃やしても燃えないんだ。
きっと災厄から守ってくれる。
力強い声がする…


BlogPaint


「上手ねフィフラ」ミラの声かな?

頭を撫でられている子供…私??

「この歳でピアノを弾けるなんて天才じゃないか?」え!この人アレクシ??
両脇を抱えられて高い高いされている。


お父さん…笑ってる ミタノヒサシブリ…


「私ね…ピアノで一番になる」…。

「私ね、パパとママにたっくさん弾いてあげるね」 やめて!

「私、街にでて試してみたい…自分でどこまでやれるか」 無理よ!

「メールくらい覚えてよ!忙しいのに電話してこないで!」 いやっ!

「なぁミラ…そのメールってどうやるんだ?」 ……。

「私達は最後まであなたの味方よ」 !?


はっと我に返ると老人は消えていた。


思わず時計を見る…

22時31分

どういう事なの?
私は一人キョロキョロと周りを見渡したが特に変わったこともなかった。


クリスマスメドレーが演奏される中、私は足早に家に戻った。



故郷へ…


「え?休む?困るよ急に…」


BlogPaint



次の日の朝
私は列車に乗っていた。

何年も帰っていない
いや…帰れていない実家へ。

実は夕べのことはほとんど覚えていなく…
気がついたら家にいた。


「ナナカマド」
「ピアノ」
「メールどうやるんだ?」


それ以上に父の笑顔
母の言葉だけが残っている。

「サイゴマデミカタ」

数時間の列車を降り更に列車を乗り継ぐ…


BlogPaint



久しぶりにここに来た。

私は
「ピアノで有名になる」とだけ言い残して街へ出た。

実家に帰らなかったんじゃない…
帰れなかったんだ…恥ずかしくて、悔しくて…

結局投げ出した自分に。


「来たのね」とだけミラは言った。

コクンとうなずく私。


「こっちにいらっしゃい」


言われるがままに家に入る。
あの頃のままで何も変わっていないのに、別の家のように感じた。


「お父さんの部屋よ」


え?

父のデスクには一通りのPCが揃っていた。

「だってお父さんメールの一つも…」

促されるまま開かれた画面を見た。
PCの画面を見た私は画面が歪んでいくのを感じた。

「お父さん…お父さん」

ミラは私をそっと抱きしめてくれた。
少し痩せたかもしれない手、でも温かくて…嬉しかった。



BlogPaint



少し落ち着いた私を見てミラはそっと喋りだした。

「お父さんね、あなたが出ていって随分落ち込んじゃってね」

「寂しいものだから電話して怒られちゃって」 あ…


「メールを教えてくれって私に頼んだの」
「結局覚えられなかったけど…向いてないのね」


「その後ね、必死に本を読んで勉強して」
デスクには【初心者向けのPCの使い方】や【始めようインターネット】などの本があった。


「さっき見たSNSのサイトを作ったのよ」

「娘を応援して下さい」
「見かけたら聞いてやって下さい」てね。

あの時の見知らぬ人たちそれで…お父さん。


お茶を一口飲んでミラはふぅと息を吐いた。

「あの人は無口で誤解を産みやすい人だったけど、誰よりもあなたの味方だったわ」


アレクシの座っていた椅子を見ながら。

「そうそう、あなたの名前の由来しってる?」


知ってると答えた。


「ナナカマド」は魔除けで何回燃やしても燃えないんでしょ?


「あらよく知ってるわね!」ちょっと驚くミラ。


「お父さんがどんな道を進もうとも災いから守ってくれるようにって」

「あの人三日三晩悩んで選んだんだから…」
「自分は病気に勝てなかったけどね」

ミラの笑顔は少し寂しそうに見えた。


色々な話をした。
その中には知らないこともあった。



その夜は家族3人で厳かに過ごした。

父の座っていた席…
何故か父が好きだったタバコの匂いがした気がした。



私の忘れ物



翌朝父の墓へ

手紙を書いて置いてきた。
なんだか恥ずかしくて仕方がなかった…


BlogPaint


大嫌いだったタバコの匂い

「このタバコ…好きだったでしょう?」
「だから止めなって言ったのにさ…」

「…バコばっかり吸うから死んじゃうんだよ…」

タバコはジュッと音を立てて煙をくすぶらせていた。



私は街へと戻った。

手には父の作ったタバコの匂いのするノートを持って…

そこには私の6位とか7位とか小さく名前が乗っている記事が貼ってあった。
不器用な父らしくアナログなやり方で。

汚い字で
6位入賞おめでとう!

なんて書いてあって…結局アナログじゃない。


SNSのページは私が引き継ぐことにした。
その経緯を記した投稿にはそこそこの反応があった。

今日はその投稿の返信から
「うちで弾いてみませんか?」と言ってくれたお店にいく予定になっている。


正直どこまでやれるかわからないし、母を一人で実家に置いておくわけにもいかないから…


でも母が帰り際に言ってくれた

「私達は最後まであなたの味方だから」という言葉を胸に…

父が残してくれたこの名前と共に私は生きていく。

本当に響かせたい物を取り戻したから。




FIN•*¨*•.¸¸♬





どれもオリジナル作品です










ご登録頂ければ嬉しいです






※ご登録頂くと記事が更新された際にLINE等で通知が届きます。
見逃したくないブログやよく閲覧するブログなどに便利な機能ですꕤ




ツイッターのんびり更新中です











  



たった一つの願い˚*・.。  【創作寓話】byよつくま




【たった一つの願い】


モノに心は宿らないのか…
宿るわけがない、モノはモノだ…。
用済みのモノは廃棄するしかない。ゴミとして…

BlogPaint

果たしてそうなのでしょうか?

これはこんな時代に起こるかもしれない不思議なお話…。



雷鳴と静寂


ドーンと大きな音を立てて一本の雷が落ちた。

BlogPaint

あとはまた静寂に包まれるのみ。

ここは廃棄場…
そう、誰にも気にされることなくあとは廃棄処分されるだけの。
モノたちが集められる場所…。



トレエとの出会い


一時期大ブームになったコミュニケーション型アンドロイド。
AIが搭載されて飼い主を認識し、行動パターンなどから細かく行動できる。

BlogPaint


お世話も不要、散歩も不要、そして子供の相手から介護まで幅広く対応できることから、大人気となった。
都市型の暮らしにも対応できるのでかなりの数が販売された犬型モデル トレエ型。

しかし何年か過ぎると、人型のアンドロイドが普及し始め、ペット型のアンドロイドは廃れていった。

「特に何もできないし」
「子供も大きくなったし見向きもしないよ」
「家事をしてくれるわけでもないし」

そして多くの犬型モデルトレエ型は廃棄されていった。
その中に宿る魂など知る由もなく…。

それはそうなのだ…。彼らはモノであって命ではないのだから…。



「トレエ!こっちだおいで!」
トレエはセンサーを起動した。

ピッ!ご主人タピオの声を確認。行動開始。

BlogPaint

タピオは一人っ子で共働きの家族と暮らしていた。
家に一人でいる時が多いので、遊び相手として両親がアンドロイド犬トレエを与えたのだ。

トレエはいつでもタピオのそばにいた。
それはそうプログラムが動いていたから、タピオの中に寂しさを感知していたから。

プログラムに沿って行動していたからなのだろう。
進んだAIプログラムは対象の感情を読み取り、最善の行動をとる。
そう作られていたのだ。


「今日はボール遊びをするぞ」
「トレエ!とってこい!」

「ワン!」

きちんとボイス機能も搭載されていた。

タピオはボールを持ってくると頭をなでてくれる。
ピッ!タピオに喜びを感知…。


何度もボールを持ってきては頭をなでられた。
なでる行為に何の意味があるか…ピッ!理解不能??

しかしそれでよかった。
それを考えるプログラムはされていないのだから。

そんな普通の日々が続いていった。
何の問題もない日々が。



訪問者と別れ


とある大雨の日だった。
時折雷鳴も轟いている…。

両親はいつものように不在。

「ドンドンドン!」

ドアを叩く音が響いていた。

BlogPaint


スイッチオフ状態のトレエはタピオの声を感知した。
いつもと違う緊張した声…
ピッ!恐怖を感知。スイッチオン。行動開始…。


玄関には男に腕を引っ張られたタピオの姿。

ピッ!登録リスト参照…。
ステータス「アンノウン」警戒セヨ…。

プログラム警戒。
警告音発信…。???

ピッ!システムエラー発生…。


トレエはその男に突進をしていた。
よく理由はわからなかったが…そうしたほうがいい気がした。

プログラム上は静止して吠えるとそういっていたのにもかかわらず。

「痛っつ!なんだこのロボットは!」
ガシャーンと音がした。

トレエはそのまま壁に投げつけられて動かなくなった。

タピオマモラナケレ…

「トレエ!トレエ!」
タピヲ…ヨンデイ……トレエはシャットダウンした。


「なんだ?今の音は?」
近隣の人たちが出てきた…

「ちっ!」
男はその場を離れて逃走した。


その夜…

最近は物騒になっていて小さな子供を狙った誘拐などが増えてきていた。
比較的裕福で留守がちなタピオの家は狙われていたようだった。


「きちんとした施設に預けたほうがいいな」とタピオの父
「警備システムのある人型アンドロイドにしましょうよ。洗い物してくれるのもあるのよ」と母の声

タピオは二人に訴えた。
「トレエが救ってくれたんだ!悪党にタックルしたんだよ!」
動かないトレエを抱えて泣くタピオ…

涙がポツリとトレエに落ちている

「ナンダロウコノカンジハ…アタタカ……」それがメモリーの最後であった。



廃棄場と意思


雷の衝撃があたりに響き渡っていた。
無機質なグレーの空間。
一瞬の光でガラクタの山が浮き上がる。

BlogPaint


その後静寂が訪れた…何も変わらない。変わりようがない。
ここは役目を終えたモノしかいないはずだった。


ピッ!再起動を確認…
バッテリー20%
損傷個所多数…
行動…可能…ピッ!

トレエは雷によって充電をされて目を覚ました。
そこがどこかはデータになかった。

タピオサガス
タピオマモル
アタマナデラレル…

ふらふらと動き出すトレエ。
廃棄場の道は坂になっており、四肢のパーツ破損状態のトレエにとっては余りに過酷であった。

その方向がどこに向かっているかも全く分からない。

プログラム上ではアラートが鳴り響き…
メンテナンスプログラムが発動中。
ピッ!シャットダウンを開始…

タピオ…
アイタい…

シャットダウンプログラムは破棄された。
そこには確実に「意思」が存在していた。

この坂の向こうに青白い光が見えた。
なぜかそこに向かわなければならないと判断した。

それはプログラムでもなんでもなくトレエの「意思」で…青白い光へと向かって。



青い光とたった一つの願い


雷鳴は止むことなくあたりを時折照らし続ける。

青白い光のそばにつく頃
トレエの充電は3%くらいだろうか…

BlogPaint


大きな角を二つもったふさふさの毛の獣と赤い服の老人が見えた。

「ほっほっほ…珍しいお客さんだ…」

タピオアイタイ
タピオマモリタイ…

「それがお願いかな?」といわれた気がした…
フッと視界が暗くなりトレエは動かなくなった。

タピを…。

青い光だけがあたりを包んでいた。



裕福と孤独と再会


今日はクリスマスの日…だというのに両親は仕事…

裕福さの中にある孤独。
それでも暖かい家があって、恵まれているのだろう。
そう…きっとそのはずだ。

BlogPaint


タピオは人型アンドロイドと一緒に暮らしていた。
あれから同様の事件は起こっていない。

不審者を警備する新型アンドロイドには事件にかかわるプログラムがされており、
犯罪者リストも搭載されていることから、そう簡単に手を出せないようになっていた。
警察への連絡機能や扉の開閉も制限できる。

「タピオ様…シュクダイノオジカンデス」

「どうして君はそんなに機械的にしゃべるんだよ」とタピオ
「ソノヨウニプログラムサレテイマス」
「つまんないの…」


現在発売している人型アンドロイドには、AI抑制システムが搭載されている。

これは不用意な行動…
つまり欠陥行動が起こりうる重大なプログラムミスを未然に防ぐためのプログラムである。

しぶしぶと机に向かうタピオ…

ペンを持つも上の空で窓を眺めていたタピオ。


その時だった。


「ワゥワゥ!」

窓の外から声が聞こえた…

「君、何か言ったかい?」とタピオ
「ピッ!ナニカゴヨウデスカ?」
「何でもないよ!もう!」


「ワゥワゥ!」

やっぱり聞こえる!

BlogPaint


雪景色の庭の一角…
樹の陰に白い影がある。
その方向から声が聞こえるのだ。


窓を開けると白い犬が一匹尾を振っていた。

なぜか涙があふれてくる…僕はあの犬を知っている!
玄関へ走り出すタピオ。


「トレエ!トレエだろう!!」
「ばうばぅ!」


出てきたタピオの顔をなめる白い犬。


アタマをなでられて嬉しそうな白い犬…。


窓の開閉も玄関の開閉も…アンドロイドによって管理されている。

普通なら外出できないようになっている窓や扉がその時は開いたこと。
警備モードがいったん解除されていること…。

タピオにはそんなことは知る由もなかった。


「ピピッ…Merry Christmas!Toree!」




【たった一つの願い】おしまい




拡がる寓話の世界⇓





ご登録頂ければ嬉しいです(๑´▿`)♡⇓






※ご登録頂くと記事が更新された際にLINE等で通知が届きます。
見逃したくないブログやよく閲覧するブログなどに便利な機能ですꕤ


ツイッターのんびり更新中です






  

このページのトップヘ