「ブルークリスマスの奇跡」 【創作寓話】 よつくま




【「ブルークリスマスの奇跡」】



ある古びた村の外れに一本の大きな「もみの樹」がありました。
この村に残っている子供はもう彼一人…



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かつては栄えたこの村も、
「鉱山」の閉鎖とともに衰退していきました。

生きる希望を無くすもの。
街へと移住していくもの。


この物語はそんな村に住むとある少年が起こした、
小さな「希望」の物語です。


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一枚の写真


寂れた村の片隅。

彼の家はもちろん裕福でなく、
いつも同じ「ぼろの服」を着て教育も受けられず。


たった一人「もみ樹」の下で遊んでいました。


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鉱山の事故で父母は他界…祖母が一人の彼の家。


とある日、彼は家で古びた写真を見つけました。

そこには村はずれの「もみの樹」に、
きらびやかな飾りが輝いたクリスマスの夜の写真でした。


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「ばあちゃん、これ村はずれのもみの樹?」


祖母は答えました。

「ああ…懐かしいね……この村も昔は栄えていたからねぇ」

「昔はねあのもみの樹の周りでクリスマスのお祝いをしたもんさ…きれいだったねぇ」

遠い目をする祖母。


その時でした、

少年は何かを決意したように家を飛び出していきました。


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「あ、これ…どうしたんだい!」


祖母が声を上げた時には、
もう少年は見えなくなっていました。



「小さな少年」の「小さな決意」


その日から彼は一人で「もみの樹」に飾りをつけ始めました。


豪華な飾りなどあるわけもなく…


「木の枝」
「木の実」


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少し壊れてしまった「自分のおもちゃ」など…一生懸命に飾りました。



しかし「もみの樹」は大きく上の方までは手が届きません。

「どうしよう…」


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途方に暮れていると、

空から「ぴちち」と声がしました。
上を見ると青い小鳥がこちらをみていました。


彼は、

「小鳥さん手伝っておくれよ…もみの樹を綺麗に飾りたいんだ」

と話しかけました。


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やや間があり、

小鳥は首をかしげて飛び去ってしまいました…



青い小鳥…希望


次の日もその次の日も、

雪が降りしきる中、少年は粗末な飾りを造っては樹に飾っていきました。


「もみの樹」がよみがえったら村も元気になると思ったのです。
「クリスマスのお祝い」をできると思ったのです。


それは純粋な気持ちでした。


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「上にも飾りたいんだけどなぁ」

ふぅとため息を付いて空を見上げる少年。



その時でした。

「ぴちち」と声がすると例の青い小鳥が飛んでいます。

口に草花で造った飾りを持っています!


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「手伝ってくれるの!」


「ぴちち!」


小鳥たちは行ったり来たりしながら飾りをつけていきます。


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青い小鳥たちのおかげで樹の上の方まで、飾りつけははかどっていきました。


「もしかしたら、もしかしたら、元気になるかもしれない」


そんな事を考えながら毎日夕暮れまで、

ただ一生懸命に飾り付けを続けていきました。



冷めた大人たち


そんなある日、村のおじさんが通りかかりました。

手には斧を持っています。


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「ぼうずなにやってんだ?」


ぶっきらぼうにおじさんは言いました。



「もみの樹をよみがえらせるんだよ…昔はクリスマスにお祝したんでしょ?」

と少年。


「けっ!」


おじさんは言い放ち。


「この樹はもう駄目だ…切り倒して売っちまうんだ」


「どけっぼうず!」


なんと少しでも収入を得るために、
「もみの樹」を切り倒すつもりなのです。


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おじさんは少年の手を引っ張って樹から引き剥がそうとします。


「やめてよ!僕が復活させるから…」
「きっと復活するんだよ」


泣きながら訴える少年。


「ちっ!」


舌打ちしておじさんは行ってしまいました…




少年の熱意に打たれて


12月23日になり「もみの樹」は飾り付けられていました。
もちろん粗末なものです。


「破れた靴下」
「車輪のない車のおもちゃ」に「松ぼっくり」


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そして小鳥達の造った「草花のリース」
でも彼は思っていました…


これで「もみの樹」はよみがえるんだと。

そう信じて疑わなかったのです。


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青い小鳥の見る目線の先に、

物陰に隠れるきこりのおじさんがおりました。


突然ごそっと音がして現れた黒い影に、
少年は驚き尻もちをつきました。


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のそっと現れたのはこの前のおじさんでした。


「その、こないだは悪かったな…」

「まさかこんなに飾り付けするまであきらめないとは思わなかったよ」


ばつが悪そうに言いました。


「ぼうず!ツリーなら電球つけなきゃな!」


とウインクしてくれました。


「うん、ありがとうおじさん!」


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純粋な彼の気持ちが通じ、
村の数人が手伝って電球をつけてくれました。


久しぶりのお祝いに村の人たちの気持ちも、
あの頃のように…よみがえっていったのでした。



「ブルークリスマスの奇跡」



今日はクリスマスイブの夜12時です。

数人の村人が「もみの樹」の前に集まっています。


「さあ電気をつけるぞ」


とおじさん。


「3,2,1」カチッ! 反応はありません。



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「ん?」



カチッ!カチッ!


何度やっても電気はつきません…


「畜生おんぼろめ!いかれやがったか」


おじさんは機械を蹴っ飛ばしました。


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少年は呆然としました。


頑張ったのに…
小鳥も手伝ってくれたのに…
おじさんも村の人たちも手伝ってくれたのに…


自然に空に手を合わせていました。


空には月が出ていました…その月に向かって手を合わせました。


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その時でした。


どこからともなく

「シャンシャンシャン!」
「シャンシャンシャン!」


と聴こえる鈴の音…



彼はふと空を見上げました。

「ほっほっほ~」

とトナカイのそりのシルエット!


「Mary Christmas!!」


あたりは蒼い光で包まれたのです。


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みんな目を開けていられません。

まばゆく蒼いそんな輝きがあたりを包んだのです。


少年はゆっくりと目を開きました。



一瞬の静寂が訪れ…蒼く…どこまでも蒼く…
「もみの樹」の電球が一斉に蒼く光り、


小鳥たちも、

「ぴちち」「ぴちち」

と大はしゃぎです!



村人が見守る中「もみの樹」が復活したのです!


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「おぉあの頃のようじゃ!」

おばあちゃんも村人も目を輝かせています。



「ぼうずに教えられちまったな…」


「あきらめてたのは大人たちだったんだな…ありがとうよ」


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彼の純粋さが村に奇跡を起こしたのです…聖なる夜に奇跡が起こったのです。


諦めないこと…
純粋な事…

そして行動するものに幸運が訪れたのでした。



この出来事は近隣の村へ伝わっていきました。


毎年蒼く光る「もみの樹」を見に人々が集まるようになりました。
人々も徐々に増えていったようです。


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いま少年の瞳に映っているのは蒼い光だけです。

村は徐々に栄えていきました。
だけど…それはまだちょっとだけ先のお話です。


おしまい(ぴちち)



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【あとがき】


この物語で主人公の少年は実は何ももらっていません。
おもちゃも服も…物質的なものは何ももらっていないのです。
でもきっと彼は偉大な事をしたのです。
彼が起こした奇跡は、この後世界に拡がっていくのですから…
「ブルークリスマスの奇跡」として。



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